オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語

銀の騎士本編

第1章~旅立ち~

オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語

ププタンの村(3)

「村長!」

シュールはノックもせずに村長の家の扉を乱暴に開けながら叫んだ。
「シュール、待ってたのよ。こっちへ来て。」
村長婦人のジュラがシュールの袖を引っ張った。
「アビも連れて来たぜ。ハンターがいるんだろ?」 ジュラはちょっと困った顔で口籠る。
「サイナと遊んでて。アビ。大人の話だから。」 やっぱり、とアビは思った。
でもいいや、久しぶりにサイナと会えるし・・・。
「アビはもう大人だよ。ゴブリンだって一人で倒せる。」
「いいよ、シュール。サイナと遊んでるから、後で何があったのか教えて。」
シュールは不服そうだったが、アビは構わずに2階へ駆け上がってサイナを呼んだ。
どうせ行っても相手にされないと分かっていたし、 大人の話はやたら長くてくどくてつまらないと思ったからだ。 サイナが部屋から顔を覗かせてにっこりする。

「久しぶりね。アビったらこの頃毎日狩りなんだもの。」
「一応ハンターだからね。」
「ハンターなんてやめたほうがいいわ。パパだって、 アビの両親だってハンターじゃなかったら死んだりしなかった筈よ。 アビなんてあんまり強そうじゃないし、すぐに死んじゃうわよ。 それに、今は特にハンターじゃない方がいいわ。 裏山の主をやっつけるなんて絶対無理だもの。」
「裏山の主?眠ってたんじゃないの?」
「昨日のひるに凄い地震があったのよ。アビは狩りに行ってて村にはいなかった?」
「シュールと森にいたよ。」
「ああ、だから知らないのね。凄かったんだから。家が壊れるかと思ったわ。」
それにしては一件も壊れてないしおばさんは地震があったなんて全然言ってなかったとアビは思った。 サイナは女の子特有の大袈裟な表現で、その時どんなに村がパニックに陥ったか、興奮気味に喋った。 アビはちょっと退屈になって話の先を促した。

「地震と裏山の主とどう関係あるのさ?」
「そう、それがね。明け方近くにローデンさんが訪ねてきて、昨日からファーが帰って来ないって。 昨日裏山へ行ったって言うの。一晩中探したけど見つからないって。 それでおじいちゃんがダリルに連絡してね、裏山に調査に行ったら大変なことが分かったの。 何だと思う?」

「裏やの主に食べられたファーの骨が見つかったの?」

半分冗談でアビは言った。サイナの語調からファーが生きているのは分かる。
もし死んでいたらこんなに、はしゃいだ様子ではいられない筈だ。

「もう!何て事言うのよ。ファーは見つかった事は見つかったんだけど、裏山の主の住処に入って、 主を起しちゃったらしいのよ。それで恐くて動けなかったんだって。」

裏山の主は、200年ぐらい前のこの村の村長が封印してからは、ずっと眠りについていたが、 その前は毎日のように暴れ、村はめちゃくちゃだったらしい。その上、冬になって動物がいなくなると、 人間を襲って食べたと云う。今はまだ夏で、食べ物もいっぱいあるかも知れないが、 冬になる前になんとか退治しないとと云う相談で大人達が集まっているのだった。

でも200年も生きてるなんて裏山の主ってどんな生き物なんだろう。
魔物なのか動物なのか神なのか、誰も見たことはない。

200年前の話というのも、 ただの言い伝えかも知れないのにそんなに騒ぐことはないんじゃないかな? サイナは興奮しているが、案外何の被害もないかも知れない。
・・・・なんて言ったら怒られそうだ。

「アビ!ちょっと降りて来て。」

階下から村長婦人、ジュラの声が聞こえてくる。
「もう、おばあちゃんったら何かしら?まだまだ話したい事がいっぱいあるのに。」
サイナはちょっとふくれて立ち上がり、ドアをあけて階段の下を覗いた。
「おばあちゃん、アビに何の用?私まだ遊びたいのに。」
「おじいちゃんがアビを呼んで来いって言ってるのよ。 大事な話みたいだからちょっと我慢して。」 「おじいちゃんが?」 サイナは首をかしげた。

村長であるおじいちゃんは、今ダリルやシュール達と話し合いをしている筈だ。

「アビ、裏山の主を倒しに行けって言われたらどうする?」

「まさか!ガードもパトロールも頼まれた事ないのに。」
そう言いながらもアビの胸は高鳴っていた。

・・・もしもそうだったら!みんなが僕をハンターとして一人前だと認めてくれたってことだ。
だけどまさかな・・・

「サイナ、ちょっと行ってくるよ。心配いらないよ。どうせたいした用じゃないさ。」
「でももし狩りの話だったら絶対引き受けちゃダメよ。パパみたいに死んじゃうんだから。」

アビはちょっと笑ってうなずいてから、階段をかけ降りた。

「おまたせ。ジュラ。」 ...アビったらなんだか嬉しそう。
男の子ってどうしてすぐ英雄になりたがるのかしら?
死んじゃったら何にもならないのに・・・ サイナは淋し気にアビの後ろ姿を見送った。

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  • 第1章~旅立ち
  • 第2章~出会い
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  • 第4章~謎
  • 第5章~迷宮
  • 第6章~決戦
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