第1章~旅立ち~
オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語
ププタンの村(1)
アビの両親はハンターだったが、魔物との戦いで10年前に2人とも死んでいた。 アビが3歳の時だった。アビは親の顔を覚えていない。独りぼっちになったアビを引き取ってくれたのは、父親の母親の妹、つまり大叔母さんだったが、彼女は大の子供嫌いだったので、アビはあまり可愛がられなかった。しかも彼女の夫は大酒飲みで、仕事もせずに一日中飲んだくれていて、酒がきれるとアビを殴った。
大叔母さんは道具屋の仕事で忙しく、アビにかまってはくれなかった。
しかしアビはそれほど不幸ではなかった。
アビの仕事は、8歳の時からハンターだった。大叔母さんの店で高く売れる、魔物の石をとるためだった。植物系のモンスターは移動できないので、狩りの練習には良かったが、光る石がとれないので大叔母さんは喜ばない。危険だけれどゴブリンをたおせば、紅い石がとれた。 3日続けて一つも石がとれない時は、夕御飯抜きがきまりだった。今日はその3日目だ。今日石がとれなかったら大変だと、アビは思った。
ハンターを始めたばかりの頃は、毎日のように夕飯抜きだったっけ。
アビは5年前を思い出していた。
お腹が空いてふらふらになっていると、サイナがおやつを分けてくれたものだった。
初めて魔物を倒したのは、ハンターになってから半年以上たってからである。
うれしくてうれしくて、走って家にかえったのを今でもよく覚えている。
持ち帰った石を誇らし気に見せて、おじさんに殴られたっけな。
だってその石は、植物系の魔物からとれる光らない石ころだったから。
それでも凄く嬉しくて、宝物にした。
あの頃は、光らない石でもとってくれば御飯を食べさせてくれたけど、 今はそうはいかない。今日は必ずゴブリンをしとめて帰らないと・・・。
「よう、アビ。石はとれたのか?」
村から出てしばらく歩くと、ハンター仲間のシュールと出会った。 シュールも魔物の石を売って生計をたてていたので、殆ど毎日村の外に出かけていた。
「おはよう、シュール。今日は必ずデカいのをしとめるよ。」
「手伝おうか?」
シュールがからかうように云った。
シュールは4つ年上で、やはり親が魔物に殺され、孤児だったので、よく気が合った。 狩りの仕方を教えてくれたのもシュールだった。でももうアビだって一人前のハンターだ。 いつまでもシュールに甘えているわけにはいかない。
「大丈夫さ。一人で出来るよ。」
アビは元気よく答えた。
大きな獲物を狙う時、ハンターが共同作戦に出る事もあったが、 通常は一人で狩りをするのが鉄則だった。
アビは母親の形見であるちょっと小振りの剣を抜いて、太陽にかざした。母親は優秀なハンターで、 結婚するまでは一人で狩りに出ていて、オーガさえも一撃で仕留めたと云う。 これは、その母が亡くなった時に使っていた剣である。結婚後はじめての狩りで、亡くなったと聞いている。 父親との共同作戦だったというが、二人ともやられるなんて一体どんな魔物だったのだろう。 小さかったアビに両親が死んだ時の様子は、知らされなかった。 ただ、二人の形見だと云う二振りの剣が残されただけであった。しかし、両親の事は全く覚えていないので、 哀しいと云う感覚はあまりなかった。アビは、剣をさやに戻した。
「おやじさんの剣はまだ重すぎるのか?」
それが母の形見の剣だと、承知しているシュールが聞いた。
「うん。持ち上がりはするけどね。あれじゃあとても戦えないや。」
「そうか。」
ひと呼吸おいてからシュールが、
「ホントに一人でがんばるんだな?」
と、念を押したので、アビは真面目な顔つきで深くうなづいて見せた。
「それじゃあ俺は、今日は山に入るつもりだからいくぞ。お前は森に行くんだろ?」
「うん。森でゴブリンをやっつけるよ。」
「わかった。がんばれよ。」
山はアビにはまだ無理だった。行ってみたいけど足手まといになるだけだ。 アビは走り去るシュールを見送ってから、森に向かって歩き始めた。
ハンターが共同作戦を好まないのは、アビにもわかる気がする。お互いに相手を助けようとして、 気が散ってしまうからなんだと思う。よほど信頼して心配しないでも済むような相手でないと、 集中力は保てない。 シュールに付いていけば、シュールはアビをかばって魔物に傷つけられるかも知れない。 ハンターが共同作戦を実行する時は、相手が危機に陥っても助けないという決まりがあった。 自分の身は自分で守るのがルールだ。助けようとすれば必ずその隙をつかれ、自分がやられる。
・・・どうしてとうさんは、母さんを作戦に連れていったのかな? 母さんはハンターをやめていたのに・・・。
「考えても答えの出ない問題をいつまでもひきづるのはやめよう。集中しなくちゃ。」
オンライン小説「銀の騎士」は、剣と魔法のファンタジー物語「KNIGHT OF SILVER」を前身とするオンライン小説サイトです
©1999- オンライン小説All Right Reserved.