第6章~決戦~
オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語
精霊(1)
まよいの森に出来上がった神殿の中、アビは銀の小箱を一つ一つ開いていった。その度に中から精霊が姿を現わし螺旋を描いて煙りのように宙で混じり合う。最後の一つをあけ、すべての精霊が雲のように目の前に浮かんで形を取り始めた。最初は光の精霊の形に、次は闇の精霊の形にと、どんどん切り替わってゆく。
最後にやっと光の精霊の姿で落ち着いたかのように見えたが、時々ふいに別の姿に切り替わってはすぐ戻る。
・・・今こそすべてをお話しましょう。なぜ生き物が魔物化する様になったのか、倒すべき敵が誰なのか。・・・
精霊は心のこもらない言葉を発した。
・・今から99年前、精霊の心は7つに分割され、世界中に封印されました。
分割したのは精霊力を弱める為です。その者の目的は、この世界から精霊力を消滅させる事でした。分割された事で精霊は、一部の記憶がポッカリと抜けてしまいました。精霊力とはすなわち太古からの精霊の記憶。再び精霊力を取り戻す為には、七つに分けられた精霊の心を一つにして、すべての精霊の記憶を取り戻す必要があったのです。・・・
光の精霊の美しい姿は、時々は闇の精霊の姿になりまた一瞬で元に戻るといった動きをとった。その度に声も違う声になり、切り替わる時にはガガガ・・と変な音がした。
「おい、なんか様子が変じゃないか?」
「うん、何だろう?嫌な予感がする。」
「この箱に封印されていた筈の悪しき力はどうしたのですか?」
チチが聞く。そうだった、それが一番の謎だったのだ。
悪しき力・・・
悪しき力?・・・
悪しき力!!!・・・
「精霊様!!」
精霊は壊れたゼンマイ仕掛けの人形のように、同じ言葉を違う声でくり返した。
・・・今こそすべてをお話しましょう。なぜ生き物が魔物化する様になったのか、倒すべき敵が誰なのか。・・・
「だから何なんだよ!」
シュールがいら立ちを見せる。
すると闇の精霊の姿に完全に切り替わった精霊が、言葉を繋いだ。
・・・悪しき力は精霊を取り込んだ。封じ込めた。銀の小箱に。悪しき力は呼び掛けた。知能の低いものが先にこれに答えた。・・・
そしてまたガガガ・・・という音がして精霊の姿は変化する。
「知能の低いものが先にこれに答えた?それが魔物化の原因・・・」
アビは呆然と言った。
「でも、精霊様を取り込んだって・・・どういう事?」
チチの表情が堅い。不安を隠せない。
それはまた火の精霊の姿で落ち着いた。
・・・悪しき力は魔法の旋律を振りまいた。心の弱いものがこれに答えた。これに答えたものは、変化した。強く禍々しい姿に。・・・
今度は水の精霊
・・・悪しき力は99年前、精霊の心を分割して取り込んだのです。99年の間にすっかり精霊の力を吸収して、精霊と同化したのです。・・・
「だから、どう言う事?精霊と同化したんなら、もう悪しき力は消滅したんだよね?」
アビは悲鳴にも似た声をあげる。
ガガガ・・・風の精霊に切り替わる。
・・・悪しき力は精霊を取り込んだ。もうすっかり精霊に成りきれる程に・・・
「精霊に成りきれる?」
チチは青ざめて唇を噛んだ。
ガガガ・・・大地の精霊に切り替わる。
・・・今こそすべてをお話しましょう。なぜ生き物が魔物化する様になったのか、倒すべき敵が誰なのか。それは・・・
ガガガガガガガガ・・・・・ガガガ・・・ガガ・・・精霊だったものは恐ろしく禍々しい姿に変わっていく。
・・・我、遥か昔悪しき力と呼ばれしモノ。我は精霊・・・クックックッ。お前達の敵は我。魔物をつくりしは我・・・クックックッ。・・・
アビは唇から血の気が引くのを感じていた。チチも同様である。自分達の信じて来たものがすべて崩れ去った。
「精霊様は・・・本当の精霊様はどこなの!?」
・・・我は精霊、精霊は我・・・
「うそ!うそよ!」
チチはもう殆ど泣き出していた。
あまりに突然の出来事に、アビもチチもシュールの様子がおかしい事に気づかなかった。魂を奪われたかの様に、ふらふらと精霊だったモノに近付いてゆくシュールに、精霊だったモノが手をのばしてシュールの頬を撫でるまで、本当に気づかなかったのだ。
「シュール!!」
気づいた時にはもう・・・
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