第2章~出会い~
オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語
まよいの森(4)
昼間だと云うのに森の中は薄暗く、湿った風が吹いていた。 位置的にはププタン村とそう変わらない筈だが、やけに寒く感じるのは慣れないスカートのせいだろう。 コーリット城はさらに北に位置しているので、寒さはもっと厳しいかも知れない。
ププタン村では、一年中気候は変わらず薄い長そでの上に革のチュニックという出で立ちで通していたが、 旅を続けるとなると、うんと寒い所もあるかも知れない。
・・・コーリットに入って物価がよけい高くなったら、 毛皮なんて買えないだろう。今朝の道具屋にあった毛皮はいくらだったっけ?・・・
そんな事を考えながら、森の中の細い路を奥へ奥へと進んでいくと、前方で何かが光った。
「シュール!」
「ああ、魔物かもしれない。気を抜くなよ。」
先ほど光った場所から視線をはずさないようにして、2人はゆっくりと進む。
初めて入った森の中、どんな魔物が出て来るか分からない。
もしかしたら2人の手には負えないような、凶悪な魔物が潜んでいるかも知れない。
アビは、前方をシュールに任せて、退路を確保する為後方に神経を走らせた。
「アビ、どうやら野犬が魔物化したらしいぞ。茂みから紅い眼が覗いてやがる。」
「大きさは?」
「わからん、多分そんなに大きくはないと思うが。」
「後ろは大丈夫だよ、そいつは襲って来そう?」
「いや、今の所こちらを伺ってるだけだ。こっちから行くか?」
「襲って来ないなら素通りしたいな。こんな格好じゃ戦えないよ。」
「そうだな。」
いつ襲い掛かって来てもいい様に構えながら、ジリジリと距離をつめる。 近付くにつれで魔物のうなり声が大きくなり、そのうち姿もハッキリと見えて来た。 燃えるような真紅の眼、醜い牙を剥き出して、ぐるる・・と唸っている。 ねっとりとしただ液をポタポタと垂らして、魔物は茂みの中から様子を伺っていた。 近くで見るとわりと小さい。
「人間を恐れているんじゃない?」
「ああ、威嚇してるだけみたいだな。こんなチビ助けだったとはな。」
「何もしないよ。大丈夫だから。」
「そんな事言ったって魔物に通じるもんか!」
「そっか。」
2人は小さな魔物をやり過ごし、さらに奥へと歩いた。
小一時間歩いただろうか。そろそろ2人に疲れが見え始めていた。
「なあ、おかしいと思わないか?さっきから景色が変わらねえ。もう大分歩いた筈だぜ。」
「ザトーは15分ぐらい歩くと入り口に戻っちゃうって言ってたよね。
って事は、ちゃんと進んでるって事じゃないの?」
「にしたって、病気の女子供がこんなに歩けるか?」
「やっぱりザトーの思い違いかな?」
「
思い違いですむかよ!こんな格好させられて!」
「この路どこに続いてるんだろう?このままどこにも着かなかったら?」
「げっ!こんな薄気味悪い森で夜明かしはしたくないぜ。」
「でも、この森の魔物って襲って来ないね。ただ見てるだけ。何でだろう?」
「俺達今まで魔物が現れると向こうが襲ってくる前に、倒してたんじゃないか?」
「あっ、言われてみればそうだったかも・・・。」
「魔物ってこっちから手出ししなきゃ、襲って来ないのかもな。」
「え~!じゃあ僕達悪者じゃない?」
「まあ、今日がたまたまかも知れないし、凶悪なやつがいるのも確かだし、
またうじうじ気にするなよ。」
「むっ、うじうじした事なんてないよ!」
「そっかぁ~?」
それにしてもスカートという物は、何でこんなに歩きにくいのか。
しかもスースーと風が入って来てかなり寒い。
「少し寒いな。大丈夫か、アビ?」
「うん、このまま夜にならなければね。」
水晶玉の中に閉じ込められているみたいに、周りの景色は歪んで見える。
「おい、あれ見ろよ。」
シュールが指差した先に、薄ぼんやりとした明かりが見える。
「薬師のお婆さんの家かな?」
「そうだといいけどな。」
2人は無意識に走り出していた。しかし、走っても走っても近そうに見えていた明かりとの距離は縮まらない。 足下もゆらゆらとおぼつかない気がする。
「くそー!何だってんだ。こいつがまとわり付いて、ただでさえ走りにくいってのに。」
シュールはスカートをまくし上げていた。
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