第2章~集い~
オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語
(1)
神殿からコーリットの城下町まで来て、宿をとっていたセラムとサンバールは、宿の一階にある酒場で食事の最中だった。まだ昼前なので、酒場といっても酒を飲んでいる者はいない。宿の常客がポツリポツリと降りて来て、静かに遅い朝食をとっていた。
「銀の騎士の再来というのがコーリット城に現われたらしいですよ」
サンバールは昨日、神殿で悪しき力を倒した英雄が、コーリット城にいるといううわさを訊いた。めずらし物好きのセラムが喜ぶに違いない情報だ。
「本物なのかな? 銀の騎士。悪しき力って、まだいたんだ。伝説だと思っていたよ」
案の定目を輝かせて身を乗り出したセラムに、サンバールは顔を綻ばせた。
「私達が倒れていた神殿は、精霊の神殿と言うらしいですよ。しかもつい最近、そこで銀の騎士と悪しき力が戦ったとか」
「じゃ、私達はその戦いに巻き込まれたのじゃないかな? それで倒れていたのかも知れないよ」
「そうですね」
サンバールは、楽しそうに言うセラムに、突飛な想像をするものだと、感心しながら頷いた。
「銀の騎士に会ってみたいな」
そう言い出す事はわかっていた。
サンバールはコホンと一つせき払いをして、王の書状を取り出しセラムに見せる。
「ここにコーリット王宛の書状はありませんよ」
途端にセラムはプッと膨れた。
「何で君はそんなに意地悪そうな顔で笑うんだ。コーリット城に入る手はもう考えているのだろう。それなら焦らさず教えてくれてもいいじゃないか」
サンバールは心外だと言わんばかりにおどけて見せながら、
「私がいつ意地悪そうにしたと言うのです。いつもこんなにあなたの為に尽しているのに」
と、肩をすくめながら溜め息をついた。
「あなたが私の事をそんな風に思っているのなら、もう私は何も言いません」
「ち、違うって言うのか? 城に入る手を考えていないって……」
セラムはうろたえながら講議しようとしたが、そっぽを向いてしまったサンバールに急に不安を感じ、最後まで言い終わらないうちに降参してしまった。
「ごめん。悪かったよ。君がいつも私の事を考えてくれているのは分かっているつもりなのだ。ただ……」
「わかってらっしゃるならいいのです」
サンバールはにっこり笑い、ホッとした顔のセラムに気づかないふりをした。
「では、この宛名なしの書状にコーリット王と書き込んで出かけましょう」
「なっ! やっぱりそんなもの隠していたのだな。君はなんて意地悪なんだ。もう私の方こそ君なんて知らないよ」
「それじゃ、私一人で銀の騎士に会って来ますよ。いいんですか?」
「うっ」
サンバールはいつもこんな風に、セラムをいたぶって楽しんでいる訳ではない。セラムがいつまでも自分の手の内にいるという事を確認したい気持ちもあるが、セラムの反応がかわいくて仕方がないのだ。断じて意地悪をしているのではない。
サンバールはさっさと席を立ち、酒場の戸口までスタスタ歩いて行ってしまった。
「わ、私だって銀の騎士に会いに行くに決まっている」
セラムはあわててサンバールを追い掛けた。
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