オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語

銀の騎士続編

Prologue

オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語

巫女はいつものように神殿へ向かっていた。

自分の仕事が始まる前の、早朝の数時間だけ、巫女を兼任するようになってから、随分経つ。
仕事は、神殿の清掃と、精霊を信じて詣でる人達に、癒しの力を与える事。場合によってはそれ以上の要求をされる事もある。

神殿の扉を開けた途端、いつもと違う空気が流れた事に気づかぬ訳ではなかったが、気にも留めなかった。

一番奥にある祭壇に近付き、持っていた布でゆっくり拭きはじめる。掃除は誰かがやってくれば中断されるので、毎日来ているにもかかわらず、あちこち埃だらけだ。

その時、清涼なる精霊力に異質な何かが、僅かばかり足下で燻っている事に、巫女は全く気づいていなかった。それは針の先程の小さな異物だった。

異物は巫女の生命力を頼りに、徐々に動きを持ち始めた。足下でクルクル回りながら黒っぽい煙の固まりとなって、巫女の足を這い上がる。

螺旋を描くように回りながら煙りは大きくなっていく。目に見えない程小さかった異物は、あっという間に拳くらいの大きさになって、這い上がった背後から突然、巫女の目前に現われた。
「あっ」
  叫ぶ暇はなかった。
小さく開けた唇に滑り込むようにして、黒い煙りが入り込む。すると、巫女の苦悶する顔はバリバリと音を立ててひび割れ、ぐにゃりと別の顔が現われた。しわだらけの渇いた皮膚に、大きな目玉だけがぎょろりとうごめく。

  不気味な動きでゆらゆらと扉口に歩き、にーっと笑う。
そして再び顔はぐにゃぐにゃと形を変え、もとの巫女の姿に戻った。
巫女は目は閉じられており、そのまま大理石の床にばたりと倒れこんだ。

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