第2章~出会い~
オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語
まよいの森(2)
翌朝早く2人は旅支度を整える為に、道具屋へ行った。
ププタン村の道具屋はアビのおばさんが細々とやっていて、旅人もたまにしか訪れなかったので、
光る石と、薬草がちょっと、それに日用品しか置いていなかったが、ここには色々な物がある。
各地から訪れる旅人達が持ち込んだであろう、めずらしい物たちであふれていた。
値段もププタンと比べると凄く高い。ププタンでは薬草は100ゾルなのに、
ここでは500ゾルもしていた。
1バル=10000ゾル(100ゾル=約100円)
でも水を入れる大きな筒だけでも買っておかないと、今持っている物では2日しかもたない。
「げっ。水筒が2000ゾルもするのか?ちょっとまけてくれよ。」
シュールが店番の女の子に言う。
「そんな、御主人に怒られてしまうわ。」
まだ朝早いので主人は寝ているのだろう。
旅人の朝は早いから店は早くからあけているが、
自分は眠いので人を雇っているといったところか。
「そんな事いわず、ちょっとくらいまけてくれよ。」
シュールがカウンターに乗り出してだめ押しすると、
黙っていれば高貴な生まれに見えなくもないシュールの整った目鼻立ちに、
店の女の子はハッとして思わず目を伏せた。
「なぁ、いいだろ?2つ買うからさ。2つで1000ゾルでどうだ?」
シュールはお構い無しに女の子の顔を覗き込んだ。
女の子はますます顔を赤らめてうつむいたまま、小声で言った。
「2つで2000ゾル。1つしか売れなかった事にするから。」
「やった!サンキュ!」
シュールは2000ゾル置いてさっさと店を出た。
「シュール、ちょっとお店の人かわいそうじゃない?御主人に分かったら怒られるよ。」
「大丈夫だよ。いくつあったかなんて覚えてやしないさ。」
・・・そうかなぁ?・・・
「けど、薬草やなんか、もっと持ってくりゃよかったな。こんなに高いなんてぼったくりだぜ。」
「コーリットに行ったらもっと高いんじゃない?」
「そうか、怪我は出来ないな。村長からもらったのが50000ゾル、俺の持ち金が12000ゾル、
お前は文無しだろ?宿屋に2000ゾル払って今2000ゾル、残り58000ゾルか。
結構あると思ったが、こんなに物価が高いんじゃあっという間に無くなるぜ。
またせっせと光る石をためなけりゃな。
そういや俺、バルって見た事ないな。お前ある?」
「ううん、ないや。でも58000ゾルって、5バルと8000ゾルだよね。
バルで持ってると凄く少なくなるね。」
「そうだな。光る石をためといてまとめて売りゃぁバルが入るんじゃないか?」
「ためてる間、石を持ち歩くのも重いね。」
「それとも昨日言ってた氷の洞くつってのに、挑戦するか?10000バルだろ?」
「え~!!無理だよ。死んじゃうよ。」
「ああ、分かってるよ。いくら俺でも大丈夫じゃない事ぐらい分かるぜ。」
軽口をききながら歩いていると、前から如何にもごろつきと云った風体の、
目つきの悪い男達が歩いてくる。1、2、3・・・全部で5人いる。
なんだか嫌な感じだと思いながら、そのまますれ違おうとすると、
「ちょっと待ちな。」
「いっ!!」
すれ違い様に腕を乱暴につかまれたアビは、思わず声をあげた。
かんぱつ入れずにシュールが、右手で男の腕を引き剥がし、左手でアビを庇う。
「何すんだ!きたねえ手で触るんじゃねぇ。」
「なんだと?田舎もんのガキが!!」
別の男がシュールに殴り掛かろうとするのを横目で制しながら、
最初に腕をつかんで来た大男が貫禄のある重たい声で、
「てめぇらぁだまってろ!」
とすごむ。するとたちまち、ざわめき立っていた4人のガラの悪い男達が、
シーンと大人しくなった。
「ヒュ~、すげぇな。一声で黙らせるなんてよ。あんたがボスかい?
で、俺達に何の用だ?」
シュールはこれっぽっちも恐れる様子なく、対等に大男を見上げた。
・・・これだけの体格の男達5人と、喧嘩になったら絶対に勝てないだろうな。
魔物よりよっぽど恐いや。喧嘩になったら薬草どころじゃすまないだろうし・・・
などと考えながら、アビは、逃げ出す隙を伺っていた。
しかし顔は恐いが大男に敵意はないらしく、妙に馴れ馴れしい態度でにじり寄って来る。
「おまえら、コーリット城に行くんだろ?
実は俺達もコーリット城から出たあの‘ふれ’目当てで来たんだが、
まよいの森がどうしても抜けられねぇ。おかげで半年も足留めよ。」
「何だよ、でかいなりして。おれたちゃあんたの泣き言聞いてられる程暇じゃないぜ。」
「何だと!このくそなまいきな!!」
「てめぇらぁだまってろ!!」
シュールに向き直ると大男は、不気味に声音をがらりと変えた。
「まぁ聞けよ。お前らだってまよいの森を抜けなけりゃ困る筈だ。
まよいの森を抜ける為の情報、買わないか?」
「そんな情報があるなら何であんた達は、未だにここにいるんだよ。」
「俺達だって何もしないで半年もここに居たわけじゃねぇ。
ちゃぁんと調査して、まよいの森に、ある種の結界が張ってあるって事ぉ突き止めた。
そんで、その結界に絡んでるらしい人間の居場所も突き止めた。どんなもんよ!?」
「どんなもんって・・・んな事言ってねえで、
さっさとそいつに会いに行って、結界とやらをときゃぁいいじゃねぇか。」
「出来るならとっくにそうしてるに決まってるじゃねぇか!」
「何で出来ないんだよ。」
「おっと、この先は情報料もらわなきゃしゃべれねぇな。
さぁどうする?情報買うのか、買わないのか!」
「いらねぇよ。ばかばかしい。
間抜けズラのあんたらに調べられるなら、
俺達にだってすぐ調べは付くぜ。」
「黙ってりゃいい気になりやがって!」
後ろでもどかし気に聞いていた男の一人が、とうとうがまんできなくなってシュールにつかみ掛かった。 シュールも構えてやる気を見せる。
「やめてよシュール!」
「お前は引っ込んでろ!」
アビと大男が同時に止めに入って、なんとか喧嘩は免れた。
不服そうなシュールに、
「こんなとこで喧嘩したってしょうがないよ。」
と小声で言うとアビは向き直って、大男を見上げた。敵意がないなら恐くはない。
「それでおじさん、その情報っていくらなの?」
「おぅ、ぼうずの方が話が分かるな。30000ゼルでどうだ?」
「なにぃ?3000の間違いだろ?大体いらないっつってるのに・・・ぶつぶつ・・」
またよけいな軽口で、男達を怒らせると厄介なので、
アビはシュールのそでを引っ張って、言葉を塞いだ。
「俺達も半年の足留めですっからかんでな。こんな田舎の村に仕事はないし、困ってる。
20000でいい。買わねぇとおめぇらだって足留めで宿代がかさむばっかりだぜ。」
アビがシュールをつつき、指を一本立てて目だけで同意を求め、シュールは
「勝手にしろ!」
と、そっぽを向いた。
「10000なら買うよ、おじさん。ただし、5000は後払い。
ほんとに必要な情報じゃなかったら、5000は払わない、それでいいでしょ?」
「ぼうず、ちっちゃいのになかなかしっかりしてるな。決まりだ。5000よこしな。」
「ちっちゃいは余計だよ。」
・・・残金48000ゾルか・・・
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