オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語

銀の騎士本編

第6章~決戦~

オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語

精霊(2)

・・・我に力を与えるは若者の生気。運命の子に付き添いし若者、お前が我の糧となる。来るがよい。・・・

「シュ、シュール!行っちゃダメだ!」
「はなせ!!」

腕にしがみついたアビをシュールが乱暴に振払うと、アビは壁に打ち付けられた。
驚きの目を向けると、今まで見た事もないような侮蔑に満ちた顔でシュールが冷たく言い放つ。

「子守りは終わりだ。二度と俺の前に姿を見せるな。」
背筋が凍り付く。

子守り・・・?
それは僕の事?

・・・くっくっくっ。人間とは愚かしい。麗しき乙女の姿をなぞりさえすれば、かくも容易く我の術中に落ちる。くっくっくっく。はっはっはっ。

我の封印をとくは無垢なる子供。教育という名の悪しき習わしを吹き込まれていない。
運命の子よ。お前は世界を破滅に導く運命の子。愚かしい人間よ。お前の役目は終わった。我は復活せり。・・・

愚かしい人間よ。
愚かしい僕?

お前は世界を破滅に導く運命の子。
僕は世界を破滅に導く?

二度と俺の前に姿を見せるな。
二度とシュールの前に姿を見せてはいけない?

愚かしいから?
世界を破滅に導くから?

僕が嫌いだから?
シュールが僕を嫌い?

違う!

シュールが僕を見捨てた。

そうだ。お前はシュールに迷惑ばかりかけていた。
当たり前だ。

違う!

「アビ!聞いてはダメよ!その声は違う!シュールは操られてる!」

アビの目にチチが口をパクパクさせて何か訴えているのが見える。
でも声は聞こえない。

チチ?

ああ、そうか。チチも僕を責めているんだね。
僕のせいでシェーラを失ったから。

僕のせい?
そうだ。お前のせいだ、何もかも。

何もかも?
お前は精霊に世界を救う運命の子だと煽てられ、いい気になっていた。

僕はいい気になっていた?

違う!

愚かしくも煽てられ操られ世界を破滅に導いた。

操られ?

違う!

あれは光の精霊なんかじゃなかった。
運命の子だと言われ舞い上がっていた。

舞い上がっていた?

違う!
そうだ。何もかもお前のせいだ。

違う!違う!違う!
違わないさ。だからシュールに見捨てられる。チチに恨まれる。

恨まれる?
チチが僕を?
恨んでいる?
当たり前だ。たった一人の肉親をお前に殺された。

僕に殺された?
そうだ。僕が殺した。

煽てられ、いい気になって、操られ、みんなを巻き込んだ。

僕が・・・

それっきりアビは意識を閉ざした。

・・・ふっふっふっ。はっはっはっ。この者、返して欲しくば先読みの力を持った若い男を連れてこい。さすれば交換してやろう。はっはっはっ。・・・

「あっ。消えた・・・。シュールまで・・・。」

チチはアビを揺さぶったが反応はない。
華奢な体つきのチチに、小さいとはいえアビを背負う事は無理だった。

「ああもうこんな時に!アビといいシュールといい、男ってなんてだらしのない弱い生き物なの?どうしてこんなに簡単に術にはまるの?私一人でどうしろっていうの?もう!何がなんだかわからない!ああ!!!」

チチは何を言っても反応がないアビと、悪しき力に捕まってしまったシュールに腹を立てていた。でもとにかくここにいてはいけない。そんな気がする。 チチは精神を集中させ近くに助けの手がないか探る。チチを中心に精神の波が徐々に広がってゆく。

森の木々がチチの旋律を受け取る。
葉がざわめいてある一点を教える。

見つけた!

小さく呪文を唱え、一番近くにいた助けになる人間を呼び寄せる。
懸命に。

この声に気づかぬ鈍感な人間でない事を祈りながら。

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