オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語

銀の騎士続編

第2章~集い~

オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語

(7)

チチが相談にやって来た時、アルビンはやはり窓の外の二人を見下ろして、なにやら物思いの最中だった。
「あの、少しお邪魔してもいいでしょうか?」 チチは緊張した声で問いかけた。

アルビンの力はチチにとって絶大だった。こんな偉大な力を持った方と話をする事が出来るなんて、今でも信じられない。先読みの里で魔法学校に通っている時、誰もが次期長候補に憧れ、ひと目でも姿を垣間見れた時には、心臓の音が爆弾ほどに聞こえたものだった。その中でも物静かで美しいアルビンは、一番の憧れだったのだ。

「どうしたのですか?」

振り返ったアルビンは、逆光になって表情が見えなかったが、声音は穏やかだった。
チチはセラムの事を相談し、話しているうちにこんな事でアルビンを煩わせるのが、罪な事のように思えて来た。アルビンは一言も発せず、黙ってチチの話を訊いている。そのうちに、とても悪い事をしたような気持ちになって、チチは黙り込んでしまったのだった。

アルビンは難しい顔で考え込んでいる。
チチは叱られている時のようにうつむいて、アルビンが何か言うのを待つしかなかった。
そんなチチにやっと気がついて、アルビンは呼び掛けた。

「チチ。何か意味があると思いますか?」
「え?」

顔をあげるとアルビンの漆黒の瞳が、射抜くように真直ぐチチを見つめていたので、どうしてよいかわからずまた下を向いてしまった。

「今、この時に……」
アルビンはチチから視線をはずし、ゆっくりと窓の方に顔をむけた。

「ここ、コーリットに、我々が集まっている事に」
「あっ」
チチは小さく叫んだ。

悪しき力を四散させた時、その場にいたのは……
アルビン、セラム、サンバール、シュール、アビ、そしてチチ。

「これは、偶然でしょうか? 彼等の記憶は消してある。それなのに、一時に全員が同じ場所に集まったのは、何かの意志でしょうか?」

確かに、アビとシュールが精霊に導かれ、封印の地に行き当たったように、これは、何かの導きと考える事も出来るではないか。

「しかもあのお二方は、銀の小箱を三つも持っていた。私にはずっとそれが不思議でした。銀の小箱は、伝説にこそなっていましたが、封印の地でこれを目にした者は今までいなかった。先読みの一族に見つけられなかった物が、なぜ異国の彼等の手にあったのか」

その通りだった。かつて盗賊によって封印の地が掘り返された事もあった。それでも銀の小箱はどこからも現われなかった。魔法学校では、銀の小箱は実際にあった物質ではなく、何かの象徴ではないかと考える先生もいた。ただ、銀の小箱の形状は、はっきりと伝わっていた。だからあれがそうだと、すぐにわかったのだ。

「あの方達をこの地に呼び寄せたのが、精霊か悪しき力だとしたら……」
「そう、思いますか?」
チチはわずかに頷いた。

「もしそうだとしたら、私達がこれからしようとしている事に、彼等がなんらかの役にたってくれるのかも知れませんね」
アルビンはにっこり笑ってチチの背中を押した。

「どこへ……」
「私が銀の騎士となって、彼等に会う事にしましょう。何かわかるかもしれない」

太陽は中天にさしかかろうとしていた。訓練を終えた騎士達がぞろぞろと建物に入っていくのが、廊下の窓から見えた。アビもシュールも、今日は騎士の宿舎で昼食を取るのだろう。
チチは侍女を一人呼び、異国のお客様をおもてなしする為のテーブルを用意させた。
その席に、チチとアルビンに少し遅れて、二人がやってきた。

「こちらが、銀の騎士様です。ほんの少しならお話になれます」
チチはアルビンを紹介した。

セラムはふらふらと近付いて来て、アルビンを感動を込めたまなざしで見つめた。
みどりの瞳は生き生きと輝いている。

「はじめまして。遠路はるばるようこそお出で下さいました」
アルビンがあいさつしている最中に、セラムは右手を突き出した。もちろん握手の為ではない。しかし、アルビンも二度目である。難無くこれをかわして、セラムと向い側の席についた。セラムが、アルビンの髪に触ろうとしたのは明らかだった。

”素直な方だな。”

以前は驚いたアルビンも、二度目は余裕で小さく笑った。

「ん? 何か今、ものすごく馬鹿にされたような気がする……」
視線はアルビンに向けたままサンバールを振り返り、セラムが小声で訴える。

「気のせいですよ」

尚もアルビンから視線を放せず、ろくに挨拶もしない主人の代わりに、
サンバールは、丁重にお礼を言い、セラムを引っ張って席についたのだった。

”まったく、世話のやける……”

「銀の騎士は、銀の髪だと訊いていたが、あなたは黒髪だ」
セラムは前菜には手をつけず、不思議そうにアルビンを見つめた。

「伝説の騎士は老人だったので、髪も銀だったのでしょう」
アルビンは面白そうにそう言った。

「では、あなたも老人になれば髪が銀になると?」
「ええ、私だけでなくあなただってそうでしょう? 誰でも年老いれば銀の髪になります」
「白髪じゃないのか?」
「そんな言い方は品がないでしょう。騎士の髪は年老いても白髪ではなく、銀なのです」

”ああ、アルビン様はセラム様をお好きなのだわ。”
チチはなんとなくそう思った。

セラムもサンバールも、アルビンを思い出さなかった。術が強力なのだろう。
セラムはアルビンのいい友になれるのではないかと、チチは思う。もし、ここに皆が集まった意味があるとしたら、こんな他愛のない会話を楽しむ為だったのではないだろうか?

得体の知れない悪しき力に導かれて、彼等がここにやって来たとは、到底思えない和やかさだった。

次へ
MENU
オンライン小説
銀の騎士本編
銀の騎士続編
オンライン小説
銀の騎士外伝-金の王子-
銀の騎士外伝-ショート-
オンライン小説付随Menu
読者様のご感想
世界地図
読者様イラスト
プライベート
お役立ちリンク
人魚姫
ミーチャの出版物