オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語

銀の騎士本編

第1章~旅立ち~

オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語

ププタンの村(6)

その日の内に頂上へ向かいはじめた2人だったが、なぜか無口になっていた。

・・・シュールは僕の話を信じたかな?信じたから、頂上に向かってるんだよね? それとも、とりあえず調べる所がないから行ってみるだけかな? なんで黙りこくってるんだろう・・・

アビは心配で口を開く事が出来なかった。

・・・だって、僕だってまだ信じられないもの。シュールが信じてくれなくても無理ないよ。 シュールは僕が嘘をついたと思って、怒ってるのかも知れない・・・

一方シュールは複雑な気持ちだった。 アビが嘘をついているとは思わないし、怒ってもいなかったが、 突拍子もない話でどう対応すればいいのか分からない。

・・・大体精霊なんて本当に存在するんだろうか?アビが夢を見たんじゃないのか? 伝説の銀騎士の話だって、アビは信じてたが俺はおとぎ話だと思ってたし、 裏山の主の話が全くのでっちあげってのも、考えにくいぜ・・・

考え事をしていたせいなのか、一匹の魔物も出てこないから油断していたせいなのか、 シュールは突然植物モンスターに後ろから噛み付かれた。

「いてっ!!」
「シュール!」

気がついたアビが、剣を抜いて一撃でその小さな魔物を倒し、 光らない石ころを拾ってポケットに入れた。

「怪我したの?」
「いや、かすり傷だ。俺とした事が油断したぜ。全く気配を感じなかった。」
「僕も感じなかったよ。きっとたった今魔物化したんだよ。」
「そうだな。・・・ちょっと休んで昼にしよう。」
「うん。」

2人は座って荷物をおろし、お弁当の袋をあけた。2人ともパンと水だけだった。

「しかし、なんでまた今日はこんなに静かなんだ?朝から山に入って、 出会った魔物は今の一匹だなんて。なんか様子がおかしいと思わないか?」

アビは、光の精霊の聖なる光で山に居た魔物は一掃されたんじゃないかと思ったが、 その事は言わない方がいいと思い、黙っていた。
休憩の間中、アビは殆ど黙っていた。 頂上に光の精霊の杖が本当にあるのかどうか、心配だったのだ。

・・・頂上に着いたらどこを捜せばいいんだろう?目印はあるのかな? もし何も見つからなかったらどうしよう?・・・

シュールはアビが黙っているので、アビの気持ちを計りかねて何も言う事が出来なくなった。
そうして2人は黙って荷物をまとめ、出発した。 頂上まで後1時間もあれば着くだろう。そうすれば、スッキリするに違いない。 2人は黙々と歩き続け、その間一匹の魔物も現れなかった。

心臓が、自分の身体とは別の物の様に、大きな音で動いている。 アビは、その音がシュールに聞こえるのが嫌で、少し離れて歩いていた。 頂上はもう目の前だ。

アビにとってシュールは、おばさんやおじさんよりもずっと、肉親同然だった。 つまりたった一人の肉親である。おばさんに何を言われても平気だし、 何かを期待したこともない。それはきっと、シュールが心の支えになっていたからだ。 シュールが父であり兄だった。だから、シュールにだけは見捨てられたくなかった。

・・・シュールに嫌われたら、僕は本当にひとりぼっちだ。・・・

目の前に、すばらしい景色が徐々に広がってくる。 そして最後の一歩を踏み出すと、ププタン村が小さく広がっているのが見えた。 もうここが頂上だ。空は晴々と澄み切って、汗ばんだ額を爽やかな風が通り過ぎて行った。

「ふぅ、すごい眺めだ。ここまで来たのは初めてだ。魔物も出ないし、なんか平和だな。」
シュールは気持ちよさそうに両腕をいっぱいに広げて大きく息を吸った。 まるで、ピクニックにでも来たようにのんびりしている。

・・・どうしよう。なんにもないよ。はじから全部掘り返す訳にもいかないし。・・・
アビが、泣き出したい気持ちで立ちすくんでいると、シュールが振り返った。

「どうしたんだ?疲れたのか?まあ結構きつい山だったけど、 暗くなる前に早いとこ杖を探そうぜ。今はこんなに平和でも夜になったら分からないからな。」

そういって、しゃがみ込むと地面を丹念に調べはじめた。

・・・シュール、やっぱり信じてくれてたのかな?心配することなかったのかな?・・・

アビは全身の力が抜けていった。

「突っ立ってないで、お前はそっちから探せよ。」
「うん、わかった。」

急に元気になったアビは、シュールが探しているのとは反対側のはじに駆けて行って、 勢い良くしゃがみ、地面を探しはじめた。
2時間ぐらい、2人は黙って地面に何か印がないか探していたが、 とうとう半分づつ探し終わってしまった。

「何もないか。ふつう封印は石でするもんだよな。」
確かに、それらしい石は何もない。

日が遠くの山の影に入ろうとしていた。辺りは夕日の赤に染まり、幻想的な美しさだ。

「今日はもう日が暮れる。遅くならない内に山を降りよう。」

シュールがそう言って夕日に背を向けたその時である。
夕日に照らされて3本の木の上の方が、同時に光り始めた。

「シュール、見て!」

3ケ所の光は鏡の様に反射して1点を指し示している。さっき探して何もなかったその場所は、 きらきらと輝いていた。2人が駆け寄ると、土がそこだけまるで金で出来ているように煌めいている。 2人は夢中でその場所を掘り始めた。すると、小さな銀色の箱が見つかった。

「これかな?」
「でも、杖って言わなかったか?こんなに小さい箱に杖が入るか?」

銀の箱はシュールの手のひらにちょこんと乗っている。

「開けてみようよ。」

アビはわくわくする気持ちを押さえながら言った。シュールはうなづくと、 小さな箱の留め金にそっと手をかけた。カチッという音とともに凄まじい光が箱からもれた。 光の精霊が現われた時と同じ光だ。

「ビンゴ!!アビ、目をつぶれ!」
「わかった!」

目を閉じていても尚眩しいこの光は、確かにこの世の物とは思えない。
精霊の光だと言われても、うなづく事が出来た。

数分間は目を開ける事は出来なかった。アビは朝の光を思い出して、 そろそろ目を開けても大丈夫だろうと思い、薄目を開けた。 そこにはまぎれもない精霊の杖が、透けて見える。

「シュール、もう目を開けても平気だよ。」
小さな銀の箱は消え、2人の前には透明な精霊の杖が浮かんでいる。

「すげぇ、宙に浮いてる。」
シュールは呆然として光ながら浮いている杖を見つめた。

「でもこれ、触って大丈夫なのかな?」
アビが恐る恐る手をのばすと、杖が浮かんでいた場所に光の精霊があらわれた。

「あっ、」
アビは慌てて手を引っ込めてシュールを見た。シュールにも精霊の姿は見えているようだった。

「2人ともありがとう。杖が放った光でこの山は浄化され、封印も解けました。 魔物も一瞬で消え去ったでしょう。シュール、あなたにも私の姿が見えますね。 あなたはアビとともに、この世界を救う運命をもって生まれてきました。」

「き、急にそんなこと言われても・・・。」
「そう、確かにすぐには信じられないでしょう。でも、運命には逆らえません。」

「救うったって、どうすりゃいいんだ?」

「言葉では理解するのが難しいでしょう。なぜ生き物が魔物化する様になったのか、 倒すべき敵が誰なのか、あなた達の頭の中に直接映像を送ります。 それが心の奥深いところで、膨大な記憶となってあなた達の行動に影響を与えるのです。 普段は忘れていても必要な時には、思い出すでしょう。」

精霊が話終わるやいなや、2人の身体は宙に浮き、目の前は真っ白になり、 そして意識が遠のいていった。

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