第2章~出会い~
オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語
まよいの森(6)
「ってぇ事は、氷の洞くつに行っても、碧の石はないんだな?」
「ああ、そうだよ。」
ザトーが何度も確かめる。
「お前ら、賞金を独り占めしようと思って言ってんじゃないだろうな?」
「誓ってそんな事ないよ、ザトー。それに僕達は皆に一緒に行って欲しいんだ。
僕達だけじゃ無理だよ。碧の石はないけど、何かお礼はするよ。皆の協力が必要なんだ。」
アビの必死の訴えに、ザトーは大きく周りを見回した。
「確かにな、お前らだけでも危なそうなのに、こんな婆さんとガキ付きじゃな。」
言われた当人達(シェーラとチチ)は隣のテーブルいっぱいの料理をガツガツと平らげているところだ。 半年以上森に隠っていた為、美味しい物に飢えていたらしい。
ふう、とため息を付いてザトーが仲間を見やる。
「お前ら、どうする?」
「どうって、俺はザトーに従うよ。」
一番年下のアミューが隣のクロッカの顔を、促すように見る。
「ああ、俺もいいぜ、どうせ行くつもりだったんだしな。」
クッロカは、お前は?という風にスーを見る。
「俺だって構わないぜ。アビ達と知り合ったのも何かの縁だしな。まあ精霊の話は信じらんねえけどよ。」
怖い顔で押し黙っていた最後に残ったジャンは、鼻で笑って、
「なんてお人好しの連中だ。俺はつきあってられねえ。こんなとこで死ぬのはごめんだからな。
俺は抜けるぜ。」
そう言って席を立つと、振り返りもせずに出ていってしまった。
「あの・・。」
アビが悪そうにしているので、
「気にしない、気にしない。あいつは昔から偏屈なやつよ。」
と、みんなで言ってくれたが、とても悪い事をしたような気がする。
ザトー達に頼もうと言い出したのは、そもそもアビだった。 シュールも、お婆さん(シェーラ)も、反対だった。 精霊の事はむやみに人に話さない方がいいと云うのが、シェーラの意見だった。 でも、どう考えたってこのメンバーで入って行ける洞くつだとは思えない。 シェーラとチチが魔法を使えるにしても・・・。 ザトーに頼むしかないと思ったのだが、シュールは、何も言わずに碧の石があるって事にして、 同行すればいいと言い張った。その方が良かったんだろうか?
「おいアビ。」
シュールに声をかけられアビはハッと我に帰った。
「またうじうじ悩むなよ。」
「うん。分かってる。」
結局、8人の大所帯でコーリットへ行く事になったアビ達は、色々と物入りになった。 まず、コーリット城の専属薬師であるシェーラの意見で、暖をとる為の着物が必要だという事になった。 やはりコーリットは寒いらしい。しかも1年中寒いという事だった。 南の方の街からやって来たザトー達にとって、フェンの村も充分寒かったのだが、 さらに寒いとなるとやはり毛皮が必要だった。 シェーラとチチは持っていると言うので、あと6枚買わなければいけなかったのだが、 1枚50000ゾルもしていて、とても買えそうもなかった。
「仕方ないのお、貸しじゃぞ。」
そう言ってシェーラが6枚の毛皮を持って帰って来た時には、さすがに皆驚いた。
「婆さん、金持ちだったんだな。」
「当然じゃ。コーリット城の専属薬師じゃぞ。」
「でも、あんな森ん中でお妃の出したふれを邪魔してたって事は、城を追い出されたんだろ?」
「馬鹿言うでない。我が儘なアルテ様にちょっとお灸をすえる為に出て来たんじゃ。
今頃わしがいなくなって、さぞ困っとる事じゃろう。ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。」
「ほんとかよ!」
シュールとシェーラはよく気が合っているようだ。
最もシュールに言わせると、
相性最悪なんだそうだが。
アミューとスーとクロッカは、見かけに寄らず子供好きで、アビとチチによくっちょっかいを出しては、 シェーラにピシャリとやられていた。変な組み合わせだが、アビにはまるで家族が出来たみたいに嬉しかった。
一旦フェンの村まで戻って来たので、コーリットまでは5~6日かかるらしい。
(老人と女の子を伴っては、もっとかかるかも知れないが。)
途中で休憩出来る村はない。かなりの装備が必要になるだろう。
「おい、婆さん、あんた魔法使いなんだろ?ピューっと飛んでけねえの?ピューっとさぁ。」
「無茶言うでない。人間は足で歩いて移動するもんじゃ、馬鹿もの!ポカリ!」
・・・ああ、またシュールがシェーラに怒られてる。くすくすっ。 なんだか楽しいな。ジャンも来てくれればもっと良かったのに・・・
ジャンは翌日にはもうフェンの村にはいなかった。 1人で故郷の街に帰ったのだろう。
・・・大丈夫かな?1人で。気を付けてね、ジャン。・・・
アビは心の中でジャンの無事を祈った。
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