第2章~出会い~
オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語
コーリット城(1)
「シェーラ!!半年以上もいなくなるとは!どこへ行っていた!?」
「アルテ様がシェーラの言う事を聞き分けてくれなんだから、すねておりましたのじゃ。」
「もう、シェーラには適わぬわ。碧の石を諦めればよいのであろう?」
どうやら、シェーラの言っていた事は本当だったらしい。
・・・アルテ様は国王様の従妹でな、わしはアルテ様の生まれた時からお世話しとるんじゃ。 アルテ様は昔から我が儘なお方じゃったが、最後はわしの言う事をちゃ~んと聞きなさるよ。・・・
確かそんな事を言っていたっけ。
「分かりなさればよろしいのじゃ、しかしアルテ様、わしが姿を隠している間に、 精霊様のおつげがありましたんじゃ。アルテ様が欲していらっしゃる碧の石は、 氷の洞くつにはないとな。その代わり精霊様の心が封印されておるそうじゃ。 精霊様はこの者達に封印をとく運命を授けられた。
「なんと、氷の洞くつに精霊が封印されていたとは! その封印をとけばシェーラの魔法の力はもっと強くなるのだな?」
我が儘な女王様は、ここで初めてアビ達の方へ視線を移し、威厳を持って口を開いた。
「そこな者達、この城の中に滞在する事を許す。必要な物があれば、侍女に申し付けると良い。 コーリット城繁栄の為に力を尽くしておくれ。」
シェーラに話す時の少女のような甘えた口調ではなく、女王の顔で・・・。
豪華な部屋に案内され、有頂天のむさ苦しい男達をよそに、アビは独り考え込むように黙りこくっていた。 ププタン村では誰もが信じなかった精霊の存在をこうも簡単に信じ、 どこの誰とも分からない自分達を、こんなにあっさり歓待してくれるなんて、 余程シェーラを信頼しているに違いない。 そしてそのシェーラは、アビが初めて見る魔法というモノを使えるのだ。
ここまで辿り着くまで、ホッとする間もなく戦い続けゆっくり考える暇もなかった。
迷いの森で初めてシェーラに出会った時、魔法が使えるという事がどんな事なのか、
全く想像もつかなかった。
伝説の時代にそんな人がいたって事は、古くからある詩(うた)の中で知っていたが、 どこまでが本当の事なのか、わからなかった。
魔法というモノが実際に存在すると云う事も・・・・。
余りにも色々な事がいっぺんに起こり過ぎて、考える力が麻痺していたのだ。
また、そうしなければここまで辿り着けなかったに違いない。
ここ、コーリット城に着くまでの6日間、思った以上にかなり沢山の魔物が現れ、
8人も居たのに皆ヘトヘトだった。
・・・シェーラが言うには、魔物の数が来た時より増えているって。・・・
でもそんな事より、シェーラの魔法を目の当たりに見て、こんな力が本当に現実なのか、
それさえもわからなくなる。
・・・あんなヨボヨボの(ごめんなさい)シェーラの肉体の一体何処にあの凄い力が隠れているんだろう。 魔法が使えるって知った時よりこの目で見た今の方が、よっぽど信じられないんだ。 それとも知らなかったのはププタンの人間だけで、コーリットでは魔法は当たり前なんだろうか?・・・
・・・アルテ様は、精霊の封印が解ければシェーラの魔力は強くなるって言ってた。 精霊の封印と魔法が何か関係しているんだ。 そう言えば光の精霊は、銀の騎士に精霊力を分けたって言ってなかったっけ? 精霊の記憶を貰った筈なのに、分からない事だらけだ。 本当に時がくれば思い出すんだろうか?今はその時じゃないのかな?・・・
突然声をかけられ、アビの思考が遮られた。
「おいアビ、お前も食えよ。旨いぜ。」
見るとシュールが果物をこちらに差し出している。
見た事のない不思議な果物に、
皆大喜びでかぶりついているところだった。
「おふくろに食わせてやりたいな。」
アミューの言葉に皆がシーンとなった。皆故郷が恋しいのだろう。
親のないアビとシュールには、言葉をかえす事は出来なかった。
それにしても、初め精霊の話は信じられないと言っていたスー達だったが、 シェーラの魔法に驚いた様子もなく、あるがままに現実を受け入れている様に見える。 精霊の事は、今はもう信じているんだろうか?
「ねえみんな、精霊の話、まだ信じられない?」
アビはどうしても知りたくなって、思わず聞いてしまった。 ププタン村でひどい仕打ちを受けた事が頭を過り、このまま皆の気持ちを確かめないでは、 一緒に戦う事は出来ない気がした。
「あ?精霊?がははははっ。おれぁ難しい事はわからねえからよ。そういう話は任せるぜ。 精霊がいようがいまいが関係ねえよ。碧の石はなくたって、洞くつに行きゃぁ何か手に入るだろ? 金を手に入れない事にゃ、村に帰れねえからな。」
ザトーが右手に果物を持ったまま豪快に笑った。
なんだかその笑いでアビの心はフッと軽くなったような気がする。
シュールがポンとアビの頭に手をのせた。
「何か気になる事があるならシェーラに聞いてこい。考えたって始まらねえよ。」
「シュール・・・。」
「なんせあのくそばばぁ、何百年生きてっかわかんねえからな。
何聞いたって知ってる筈だぜ。はっはっは。」
「シュ、シュール、後ろ・・・」
後ろの扉を指差したアビを見て、シュールが振り返ったその途端、
「くそばばぁとは何じゃ、くそばばぁとは!わしはまだ70じゃ。何百何も生きとらんわ!」
シェーラが仁王立ちになってシュールの頭を杖でポカリと叩いた。
「げっ。いつからそこに居やがった。」
「なんせあのくそばばぁ・・・からじゃよ。
」
シェーラの後ろからチチがピョコリと顔を出し、
「シュールってホントにお婆ちゃんと仲いいね。」
と言ってくすっと笑った。
「ちっ!」
シュールは、誰がこんなばばぁと!・・・・と言おうとしたが、また叩かれるのでやめた。
やっと学習したらしい。
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