第2章~出会い~
オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語
コーリット城(2)
「さて、勉強の時間じゃ。少しは魔法について知っとらん事にはな。」
「げ~!!」
スーとクロッカが顔を見合わせた。
「俺達も?」
「当然じゃ、わしが直々に教えるんじゃ、有り難く思えよ。」
ザトーが小声でアビをつついた。
「アビ、お前のせいだぞ。」
アビはごめんと言うように片目をつぶった。
「吟遊詩人のお話だと思えば楽しいよ、きっと。」
「吟遊詩人ってのは、美しくなけりゃ・・」
「こりゃ、そこ、うるさいぞ!」
杖がアビの頭の上に容赦なくふって来た。・・・ 結構いたい ![]()
「さてと、まずは簡単に魔法の事を話そうかの。
人間が魔法と呼んでいる力には2種類ある。知っておったか?」
「2つも?」
アビは、びっくりして言った。
「ふむ、そうじゃ、2つじゃ。」
シェーラは、ゆっくりと言葉を選ぶ。
「その1つは、精霊力を使った魔法、わしら先読みの一族が使う魔法じゃ。」
「先読みの一族って聞いた事あるぜ。何かすげえ偉いんだろ?」
クロッカが得意気に言う。
「お前、見かけに寄らず博識じゃねえか?」
ザトーも感心したようだった。
「われら先読みの一族は伝説の銀の騎士の末裔と言われておる。銀の騎士の伝説は知っておるの?」
「遥かいにしへの時、渾沌と魔法が時を支配せし頃、・・・、ってやつだろ?誰でも知ってるよな?」
シュールが皆を見回すと、皆うなづいてた。
「あれは、のちに吟遊詩人が創ったただの詩(うた)じゃ。本当の伝説はそんな綺麗なもんじゃぁない。」
シェーラの表情が険しく曇り、その悲愴な雰囲気に一瞬のうちに飲み込まれ皆、口を噤んだ。
気がついたシェーラは、皆の感じ取った不安を吹き飛ばすように、気を取り直して語調を変える。
「銀の騎士の話をする前にもう1つの魔法の事を話さねばならんの。」
いつの間にか皆真剣にシェーラの言葉の続きを待っている。
「もう1つの魔法はな、人間達が創り出す得体の知れない負の力を利用したモノじゃった。」
「人間が創ったの?」
人間に魔法がつくれるなんて、アビはまた驚かされた。
「ふむ、それは悪しき力じゃったが、詳しい事は分からん。600年以上昔の話じゃからな。 その悪しき魔法が世界を支配するようになって、世界は混乱した。善き命は次々と奪われ、 悪しき魔法をつくり出した者達は、精霊様の存在を疎ましく思うようになったんじゃ。」
「そんな前から精霊っていたのか。」
アミューが変なところに感心した。シェーラは構わず言葉を続ける。
「精霊様の力は悪しき魔法に対抗し得る唯一の力・・・。じゃが精霊様には実体がない。
この悪しき力と戦う為には、精霊様の力に堪え得る精神力を持った器が必要だったんじゃ。」
「それが、銀の騎士って訳か。」
シュールがポンとひざを叩いた。
「精霊様は銀の騎士にほんの少しの精霊力を与えた。しかしな、言葉で言うは簡単じゃが、 生身の人間である銀の騎士が、精霊様の力を受け入れるには並みでない苦しみがあったんじゃ。 騎士は何度も逃げ出そうとしたが、当時の王に無理矢理引き戻され、 毎日少しづつ精霊様の力を注ぎ込まれたそうじゃ。それはもう拷問の様じゃったと云われておる。」
シェーラが言葉を切ると、シーンと冷たい空気が流れた。
「・・・実はな、精霊様の力を注ぎ込まれたは銀の騎士独りではなかった。」
シェーラの言葉に全員が固唾を呑んだ。
「銀の騎士に辿り着くその前に、何百という若者が試され、命を落としたんじゃよ。」
「・・・・・。」
「王は世界を救わなければならず、精霊様のお言葉に見合う心強き者を集めた。 皆、命を落とす事になろうとは思わんかったじゃろう。 騎士の称号を与えるという王の言葉に、世界中から集まった何も知らない者達じゃった。 最後までその苦しみに堪抜いた銀色の髪の青年は、死んでいった若者達の事を知っておる。 伝説には残らなくても、せめて我ら一族だけは覚えていようと、語り継がれるようになったんじゃ。」
「私、そんな話初めて聞いた・・・。」
呆然と言うチチに、シェーラは優しい笑みを浮かべ、
「本当はお前にはまだこんな惨い話、聞かせたくなっかったんじゃが、
精霊様に選ばれてしまったんでは、仕方なかろうて。」
「精霊様って酷いわ!その王様だって・・」
「精霊様を責めるでない。その時は仕方なかった。そうしなければ人間全部が滅ぼされていたよ。
そうなれば、わしらのお前達も生まれとらんかったさ。」
「でも!」
「わしもな、初めてこの話を聞いた時は精霊様を嫌いになった。
じゃが、今コーリット城を治める手伝いをしているとな、
独りの人間より民全体を考えなければならん時があるって事が分かって来たんじゃよ。チチ、
お前にもそのうち分かるじゃろう。」
もう一度皆の顔を見比べてから、シェーラは話を続けた。
「さて、どこまで話したかの?そうそう、精霊様の力を与えられた銀の騎士の話じゃったな。 精霊様の力は守りの力、先読みの力、癒しの力の3つじゃ。この力を魔法として唱える為には、 かなりの勉強も必要じゃ。呪文を覚えるだけで魔法が使えるようになる訳ではないのじゃ。 チチはその事は身を持って知っているじゃろう。 まあそれはいいとして、魔法を覚えた銀の騎士は、守りの力がもう一つの悪しき魔法を、 打ち消す事を知ったんじゃ。 銀の騎士はこの悪しき力を消滅させる事は、どうしても出来なかったんじゃが、 精霊様のつくった7つの銀の小箱に封印する事は出来た。 アビ、お前の持っているその箱がそうじゃよ。」
アビは箱を取り出して皆に見えるように手の平に載せた。
「しかし何故悪しき力が封印されていた筈の銀の小箱に精霊様が封印されているんじゃ?」
「シェーラも知らないの?」
「わしも600年前から生きていた訳ではないからの。」
「アルテ様が言ってた精霊の封印をとくとシェーラの魔法の力が強くなるって云うのは本当なの?」
「知らんよ。精霊様が封印されていた事も知らなかったでな。じゃが、 そう思っていればアルテ様も急いで神殿を建てるじゃろうから、皆黙っておれよ。」
シェーラがしわしわの顔でにーっと笑った。
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