第4章~謎~
オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語
ツール村(4)
ザトーと妻は涙を流して喜んだ。当然だろう。
死んだかも知れないと、内心誰もが諦めていたのだ。
「ありがとう、ありがとう。どんな礼でもするから、なんか困ったらすぐに言ってくれよ。」
アビはザトーが泣くのを不思議そうに見つめていた。ザトーみたいな大男が泣いている姿には、なんとも言えない違和感があった。
「こら坊主!お前もよく礼を言え。」
ザトーはトッポの頭をポンと叩いて言う。
トッポの警戒は解けず、まだアビを睨み付けている。
睨みながらも仕方なくほんの少し頭を下げた。
「こら!それで礼のつもりか!」
ザトーがトッポの頭を押さえ付けて、無理矢理、身体が半分に曲がるくらいグイッと押し込んだ。
「いいって、ザトー。とにかく見つかって良かったよ。俺達疲れたから休ましてもらうからさ、トッポも疲れただろうし。」
シュールが照れくさそうに右手をあげた。
「おお、そうだな。部屋は一つしかないが、そこで休んでくれ。」
「お前らは?」
「俺達は適当に寝るから心配いらねえよ。」
「そうか?じゃ、遠慮なく休ましてもらうぜ。」
アビはすたすたと自分の家のように別室に入って行くシュールの後を追いながら、ザトーの妻に申し訳なさそうに会釈した。
完全にアビの姿が見えなくなると、トッポが父親の膝の上で興奮気味に言った。
「ねえ、ねえ、父さん。あいつ魔物だ!あんなやつ家に泊めちゃダメだ!」
「何言ってんだ、坊主?」
「あいつだよ。ちっこい方のやつ。」
「寝ぼけてんじゃねえぞ。助けてくれた人にあいつとは何だ、あいつとは!」
「だって、眼が紅く光ったんだ!紅い眼は魔物の印だろ?」
ぶはははは、とザトーは機嫌よく豪快に笑う。
「夢でも見たか?今日はもう寝ろ!なんで村の外に出たかは明日たっぷり聞くからな。」
「ホントなのに。寝てる間に喰われるぞ!」
ザトーはトッポの頭を横からポカッと殴った。
「いいから寝ろ!」
トッポは口を尖らせて、母親が用意した毛布にくるまった。
余程疲れていたのだろう。尖らせていた口からはすぐに寝息が洩れ始める。
ザトーは涙ぐむ妻の肩を抱き、愛おし気に頬をすり寄せた。
「悪かったな、こんなに遅くなっちまって。だが、光る石を大分とったしそれを金に替えて来た。少しは楽させてやれる。」
妻はそんな事はどうでもいいと言うように、頭を横に振ってザトーの大きな身体を抱きしめた。
「おかえりなさい、あなた。」
アビとシュールは、馬に草を食べさせていた。食べさせながらアビは考え込む。シュールが鼻歌を歌いながら、馬と遊んでいるのを見つめながら、さっきの事を思い返していた。
翌朝になってもトッポはアビから逃げ回っていたので、詳しい話を直接聞けはしなかったが、ザトーの話ではトッポの言い分はこうだった。
いつも通り、夕食の前にちょっとだけ遊ぼうと思い外に出ると、なんとなく誰かが呼んでいる声が聞こえた。声の方に歩いて行くと、村の入り口まで来てしまった。
トッポは村の外から自分を呼ぶ声は父親しかいないと思った。父親が帰って来たのだと。そして父親をびっくりさせる為、途中まで出迎えてやろうと思い付いた。声が聞こえる位だからそう遠くはない筈だ。もし途中で危ない目にあっても、大声を出せばすぐに父親が助けに来るだろうと考えたらしい。
ところが、進んでも進んでも父親の姿は見えて来ない。不安になって引き返そうと思ったが、村に引き返す方がもっと遠い気がしたので、走って声のする方へ急いだ。
もうどうにも怖くなった所に村が見えて来たので、喜んで入って行くとそこは廃墟だった。風の音が怖くて怖くて、トッポは近くの建物の中に隠れた。廃墟の中はなぜか風の音がうるさくて、呼ぶ声はもう聞こえなくなっていた。その後はよく覚えていないと言う。
アビは、トッポを呼んだ声の先に、何かあるのではないかと思った。何の根拠もないが、精霊は知らず知らずのうちに正しい判断ができる筈だと言っていなかったか。
「ねえ、シュール。昨日の廃墟の先に行ってみない?」
「うん、俺も今それを考えてた。」
「このままザトーの家に長居しても悪いし、今すぐ行ってみようよ。」
「ええ!?すぐ?もうちょっと休もうぜ。」
「だって・・・。」
アビは視線を落とした。トッポに目の敵にされている事が気になって仕方がないのだ。あんな風に睨まれては、いたたまれない。すぐにでも出発したい気持ちはその為だった。
アビの様子からシュールはそれに気が付き、溜め息を付いた。
「わかったよ。今すぐ行こう。馬はザトーに預けて休ませとけばいいよな。」
アビの表情がパッと明るくなった。
「ありがとう、シュール。」
「じゃあ、ザトーの奥さんに頼んで、食料を分けてもらおう。ここには店屋もないみたいだしな。」
アビは、家の中に入るとトッポに睨まれるので、
「ここで待ってるから、僕の荷物取って来て。」
とシュールに頼んだ。
「そこまで気にしなくても・・・」
言いかけたが、アビの性格を思い出して途中でやめた。
・・・そうだった。こいつは何でもウジウジ気にするやつだったっけ。・・・
「おくさ~ん。」
シュールがザトーの妻を大声で呼びながら、家の扉をあけ中に入って行ったのを見つめながら、アビはまた廃墟の先にあるモノの事を考え始めていた。
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