オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語

銀の騎士続編

第2章~集い~

オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語

(5)

「アルビン様、申し訳ありませんでした。私……」

チチが謝ったのはシュールの事だ。本来、アルビンが倒したも同然の悪しき力だ。アルビンこそが銀の騎士の再来と言われるべき人であった。

「そんな事は取るに足りないことです」
アルビンはわずかに左手をあげて、チチの言葉を遮った。

「シュールが銀の騎士であった方が都合がいいのです。私達は大きな後ろだてを手に入れたと考えるべきですよ」
「後ろだて?」
「そう、コーリット王です。私が悪しき力を倒しても、王は領地を下さったでしょうか? シュールだからこそです。正直に言ってこの調査はロールの資金だけではどうにもなりませんでした。ちょうど良かったのですよ」

アルビンの言葉にチチはなるほどと頷いた。
確かにシュールが与えられた領地からの収益は大きい。

「シュールはもうすっかりいいのですか?」
「はい、たぶん。記憶を無くしていた事すら忘れている脳天気ぶりですから」

アルビンがクスリと笑うのを見て、チチは驚きの表情を見せた。
以前はこんな風にいたずらっぽい表情をする方ではなかったのだ。
アビはアルビンの後ろで二人の会話を聞きながら、動悸が早くなるのを抑えられなかった。チチがまるでチチではないような気がする。ずっと年上の女の人のようだった。背も随分のびている。子供だったチチは、徐々に女性になろうとしていた。アビにはそれが眩しかった。

「では、シュールに会いに行きましょう」
アルビンに促され、アビは一人だけ突っ立ったままだった事に気がついた。

「アビ! 久し振りだな」
アビに飛びつこうとして、シュールは一瞬チチの顔を見て立ち止まった。

「っと、アルビン、……様。御無沙汰してます。あの……」
チチの顔色を見ると、あわてて視線を戻し、
「すいません。俺、なんか銀の騎士ってことになっちまって。あんたの手柄を横取りしたみたいになって……いや、別に俺のせいじゃないんだけど」

チチが怖い顔でシュールを突ついた。

「んもう。ちゃんと謝ってって言ったでしょ?」
「だから謝ったじゃねえか」
「俺のせいじゃないって何よ」
「ホントの事だろ? 俺が銀の騎士にしてくれっつって頼んだ訳でも……」

ぼかっ!

チチは持っていたシェーラの形見の杖を、シェーラよろしくシュールの頭に振り降ろした。

「 怒 いってぇな。何しやがる!」

アビは懐かしそうな目でその光景を眺めていた。
この部屋だった。シュールがシェーラに怒られてばっかりいたのは。

「随分元気になりましたね」

微笑ましく見ていたアルビンは、二人が言い合いを止める気配がない事を察して口を挟んだ。
「きゃ。ごめんなさい、アルビン様。ほら、シュールも謝って」
「いいですよ、そんな事。シュールには銀の騎士として、充分働いてもらいますからね」
「 汗 え゛!?」
「まず手始めに、カルの村での調査を手伝ってもらいます。銀の騎士が自ら来て下さったとなれば、口の重かったフェンの村の生き残りの人達も、快く協力してくれるでしょうからね」
アルビンは微笑みを絶やさない。シュールは以前の能面のような顔で機械的に話すアルビンより、よっぽど今の方が怖い気がした。
”ゾ~ッ。人使い、荒そうだな。”
声に出すとチチに怒られるので、心の中で言った。しかし、どうせ退屈していたところだ。こんなところに閉じこもっているより、ずっと楽しそうでもあった。
「あ、あのね。シュール、これ」
アビは覚えたての字で一生懸命書いた手紙をシュールの手渡した。読むのはなんとか出来るようになったが、書く方はまだまだ難しかったのだ。
「なんだ、こりゃ?」
折り畳んだ紙を広げながら、シュールは怪訝な顔をした。
「僕、字を覚えたんだよ。だからシュールに手紙書いた」
「お~すげぇじゃねえか、アビ。でもさ、これ、俺が読めないっての気づかなかったのか?」
「あっ。……そっか」
アビは急に脱力してしまった。あれこれ考えて何度も書き直したのに、それがシュールには読めないものだなんて、気付きもしなかったのだ。
「やだ、シュールって字も読めなかったの!?」 チチは大袈裟に驚いてみせた。
「んだよ。簡単なんなら読めるけど、文は難しんだよ! 悪かったな」
シュールは珍しく気分を害したらしい。ぷいっと横を向いてしまった。
「私が教えてあげる。読めるようになるまで、しまっとけばいいわ」
チチは膨れっ面のシュールを慈しむように眺め、背伸びをして頭を撫でた。その時チクリと痛んだ胸の痛みが何なのか、アビにはわからなかった。

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