第6章~確信
オンライン小説~銀の騎士~剣と魔法のファンタジー物語
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”俺はガキ相手に何をムキになっているんだ。しかも余分な事までしゃべっちまった。くそっ。いまいましい先読みのガキめ! 実験が終わったら殺してやる。”
ゼヒアはぶるっと身震いした。
先読みの一族が無性に怖い。あんな小さな少女でさえ、先読みと聞いただけで震え上がる。この感情は何なのだろう。確かに老婆を見て魔法使いという存在が恐ろしくなった。だが、それだけではない。先読みの一族に対するこの恐怖感は。絶対に先読みのやつらに見つかりたくない。
ゼヒアは今までその思いを意識した事はなかった。でも今日はっきりとわかった。
”俺は先読みの一族に見つかりたくない。何をされるかわからないからな。だが、何をされるっていうんだ。なぜそう思うんだ。わからない。何も……わからない”
あの少女はゼヒアを見てアルビンと呼んだ。前にもそう呼ばれた事がある。アルビンは先読みの時期長候補だ。それは知っている。老婆はゼヒアの顔をつくる時、先読みの時期長候補の顔を象ったらしい。だからなのか? だから先読みに見つかりたくないのか。先読みから隠れていたいのか。
いや違う。もっと前からだ。もっと前からゼヒアは先読みが怖かった。先読みから逃げたかった。ゼヒアという名を与えられる前から。アルビンの顔を手に入れる前から。もっと人相が悪く、ぼさぼさの赤毛で、顔中ソバカスだらけで、お世辞にも男前だとは言えなかった時から、ゼヒアは先読みを嫌っていた。恐れていた。銀の騎士伝説を嫌悪した。どうせ作り話だとわかっていながら、銀の騎士を恐れた。銀の騎士の末裔と呼ばれるやつらを嫌悪した。
”なぜなんだ……”
老婆はどういうつもりであのガキを生かしておくんだろう。
ゼヒアは一刻も早く、チチを殺したがっていた。自分のそばに、先読みの力を持った人間を置いておきたくない。たとえ力を封じていようと。
老婆は、先だってステファンがロールから連れて来た老人を、一体どうしたのだろう。どこにも姿が見えない。もし生かしていたとしても、ゼヒアの目に届かぬところに置いてくれればそれでよい。しかしあのガキに限って、あんなに目のつくところに、アジトの中心に、これ見よがしに括りつけておく必要がどこにあるんだ。
ゼヒアへの嫌がらせだろうか。
老婆はゼヒアの事をよく知っている。本人が知らない事まで知っているようだ。だとすれば、ゼヒアが先読みを恐れている事も知っているはずだ。なぜ、あんな目につくところで生かしておく!?
ゼヒアは苦しかった。あんな子供の、しかも女に恐怖を抱いている自分が嫌で嫌で仕方ない。老婆に与えられた魔法を操る力も、本物の先読みのやつらより強いとは限らないんだ。いや、強いはずがない。本物に叶うはずがない。それなのに老婆はいつも余裕でにやりと笑うだけだ。
老婆にとって所詮ゼヒアは捨て駒だ。死んだってどって事はない。他に代わりはいくらでもいるはずだ。誰でもいい。捕まえて来て髪を銀色に変えてやり、誰もが服従するような美しい容姿を与え、攻撃魔法を使う力を与えればいい。そうすれば「ゼヒア」が完成する。
ゼヒアはそう思うと不安に押しつぶされそうだった。
”俺は誰よりも強かったはずだ。腕も、そして心も。何でこんなに不安になる。なぜだ。俺は強い。誰もが魔物化したあのフェンで、ただ一人、俺だけが魔物化しなかった。それどころか、俺を殺そうとした魔物をためらいなく切る事が出来た。もとは親友だったやつを。その時だって心は痛まなかった。それなのになぜ、あんな小娘におびえる?”
ゼヒアは引き出しをあけた。中には大きな緑色の石がある。
これを触っていると安心する。他の事は何も考えないですむ。
石を取り出し手のひらにのせる。
明るく輝く緑色の光がゼヒアの心を和ませて行く。ゼヒアの胸は満足感でいっぱいになった。
――もとは親友だったやつを――
ゼヒアの冷たい銀灰の瞳に写し出される新緑の色。
”あいつは石になった。幻の緑の石に……”
ゼヒアは石を力一杯握りしめた。
指の間から眩しい程の光がもれた。
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